『ある専門分野に特化した企業向けの研修施設の構築』を基本方針とし、その理念を具現化すべく計画された建築である。 施設全体をひとつの「思考の器」と捉え、人・戦略・空間・方法論といった要素が有機的に結びつく関係性を構想した。 その結節点として機能するこの施設は、単なる“場所”ではなく、思考と交流のプラットフォームであることが求められた。
計画の母体となったのは、鉄筋コンクリート造の既存建物である。 構造体は基本的に活かしつつ、宿泊機能を備えたプライベートな空間、大人数での研修やセミナーに対応できる共有空間、さらに“食”を中心としたコミュニケーションを促すダイニングスペースという3つのゾーンを再構成した。 各ゾーンにはそれぞれ明確な性格を与えると同時に、空間同士が断絶せず、緩やかにつながり合うような動線計画と視線の抜けを意識している。
また、単なる改修にとどまらず、立地の持つ風土的背景──すなわち気候条件や周囲の自然環境──を積極的に取り込むことで、室内外の環境に連続性を持たせた。 結果として、人が自然と対話しながら、自らの思考を深めていけるような“余白”のある建築空間を目指した計画である。
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