昔も今も、子どもたちにとって興味深いことは、大人には理解し難い不思議なものなのかもしれません。 一見すると居心地が悪そうな場所でも、子どもにとっては輝きに満ちた、かけがえのない場所であることがあります。
私たちは、体育館の改築設計にあたり、『子どもの居場所』についてあらためて考えました。 そして、「新しい発見のある場所」をつくり出せないか——そんな思いから、この提案に至りました。
そこに行くと、いつもの担任の先生がプレイリーダーに変身していたり、地域の人々と自然にふれ合えたり、あるいは、見たことのない父親の姿に出会えたりする。 そんな日常の中にふと現れる特別な光景を生み出せるような空間を構想しています。
単なる体育の授業のための体育館ではなく、私たちが目指すのは「屋内自由広場」です。 外部(運動場)との一体感をもち、子どもたちの行動の延長上にある“生きた空間”として、この場は小学校という風景そのものとなるでしょう。 そして、巣立っていく子どもたちにとっての“原風景”として、長く心に残る空間となるはずです。
グラウンド側には木製のデッキ床を設け、「自由通路」と位置づけました。 この自由通路は、通路であると同時に、子どもたちがその使い方を自ら決められる空間でもあります。アリーナは、この自由通路と直結した屋内広場として計画しています。
やがてこの自由通路は、学校全体に広がり、ある場所では中庭として、また別の場所では教室として使われるようになるでしょう。 その空間には、いつも穏やかな「風」が吹いています。
この「風」は、文字どおり季節の風であると同時に、新しい学校の“STYLE”を予感させる風でもあります。 そして、学校と地域、子どもたちと地域の人々との連帯感を育み、地域への愛着を育てる、さわやかな「風」になるのです。
この風を『SAKURA WINDS』と呼ぶ。 |