建築から約10年が経過した集合住宅に新たな付加価値を与え、賃貸契約者の増加を図ることを目的としたプロジェクトである。 まずは、長らく空室となっていた3つの住戸を、それぞれ異なるデザインコンセプトで改修することから始まり、最終的には賃貸契約の期間満了にあわせて、全住戸を段階的にリニューアルしていくという計画であった。
この住戸は「DINKs(共働きの子どもを持たない夫婦)対応」をコンセプトに設計したもので、シャワーのみとしたコンパクトなバスルームや、ゆとりのある土間(エントランス)が特徴である。 また、住戸内の多くの出入口に引き戸を採用し、限られた空間を効率的に活用しながら、引き戸そのものに空間の“象徴”となるような意匠的役割も持たせた。
土間とトイレ、土間とリビング、リビングとシャワールーム、リビングとキッチン──。 これらをつなぐ引き戸の「開閉」という操作によって、空間の表情が自在に変化する。単なる間仕切りとしての役割にとどまらず、住まい手の使い方次第でシーンが切り替わる“動的なインテリア”となるよう意図している。
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